恋の魔法と甘い罠Ⅱ
不安
◇◇◇



「もっと遠くに行かなくてもよかったのか?」


「うん、だって遠くに行けば行くほど時間もかかるし疲れるでしょ?」


「まあ、そうだけどさ。でも行きてーとこあったんじゃねーの?」



行きたいところがなかった、と言えば嘘になる。



「ううん、あたしは一緒にいられればそれでいいから」



一週間あるはずのゴールデンウィークの休み。


なのに晴希さんは休日出勤が重なってしまい、三日しか休みがとれなかった。


ほんとは遠出しようか、なんて話していた。


けれどどこに行っても渋滞したり、混雑して窮屈な思いをするだけ。


そう思ったら、わざわざ遠くに出掛けなくても、あたしは晴希さんとふたりでのんびり過ごせればいいと思った。


だから県内にある温泉に行くことになったんだ。
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