Engage Blues





 歩く度に、軋んだ床板の音が鳴る。
 耳をすませる暇もなく、視界が開けると、見知った人物たちが姿を現した。



 双子や、美由紀、そして……





「慶さん」





 こちらを見返す表情は、とても驚いていた。


 当然だ。

 こうなるって、わかってた。


 ぐっと目元に力を入れる。
 泣いてはいけない。今のわたしに泣く資格なんてない。


 あふれそうになる涙をこらえ、彼への謝罪を口にする。



「ごめんなさい。こんなことになって。わたしが、ずっと黙ってたから……」



 こんなはずじゃなかった。
 もっと早くに言うべきだった。


 正直に伝えていたら、少なくともこんな形にはならなかった。



「でも、でも……ッ、ずっと一緒にいたかったんですッ。慶さんともっと……」


 その先は、声にならなかった。
 いつの間にか、こぼれた涙も止まらない。




「ほほほッ! よく来たわねッ、梨花!」


 滲みかけた視界の中、高らかな哄笑が響いた。



「今日こそ、決着をつけましょうッ!」


「そうね」



 全部の決着を、ここでつける。





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