Engage Blues
気怠い身体を俯せにして、惰眠を貪る。
その間ずっと髪や背中を撫でる慶さんの指が心地いい。
今にもとろりと睡魔が訪れそうな時、彼の呟きで覚醒状態に戻された。
「……そろそろ挨拶に行きたい」
「えッ」
ぎくりとして身体を起こした。
「ど、どこに?」
「梨花の実家」
振り返って訊ねても、嫌な予感が的中しただけだ。
彼が言わんとしたことはハッキリ理解できたので、ごまかしようもない。
「……嫌か?」
横目で送られた視線に息を詰まらせる。
慶さんの表情は、とても寂しげだった。まるで雨の日に捨てられた子犬のよう。
とても先ほどまで荒々しく求めてきた人とは思えない。
この激しすぎるギャップは反則だと思う。
情事後の壮絶な色気も放っていて、拒絶する意思は欠片も出てこない。
当然そんな心の内を慶さんが知るはずもなく、そっと手を握ってくる。
「俺は、梨花と一緒になりたいと思ってる」
きっぱりとした言葉とは裏腹に探るような視線だった。
「梨花は、どう思う……?」
はいとも、いいえとも、言えず。
答えが出ないまま、声が口をついてしまう。