Engage Blues
「……はいッ!」
あれ、懐いた?
はにかみながら思いきり返事するなんて少年みたいだ。
今にも、ちぎれんばかりにブンブン振り回す縞模様の尻尾が見えそう。
慶さんも子トラ兄弟も。意外な一面を発見したなと感心していた時である。
「ふたりとも、腹減ってないか?」
「えッ」
がっと肩を抱かれた子トラ兄弟が面を食らう。
「この先に、うまい定食屋があるんだ。その身体、かなり鍛えてるんだろ。あそこなら腹いっぱい食わせてやれる」
唐突に、食事に誘う慶さん。
スマートフォンの時計を確認すれば、ちょうど五時を過ぎたところ。
夕飯には少し早いかもしれない。
「いや、俺らそういうつもりじゃ……」
虎次郎たちも戸惑い、やんわりと断ろうとする。
すると、珍しく慶さんがにっと笑ってみせた。
「遠慮するな。梨花が可愛がってるなら、俺の弟も同然だ」
おぉ、兄貴だ。
懐の広い兄貴だ。
半ば強引について来いと促される。
断る口実も浮かばないらしい双子と並んで歩く。
前を行く慶さんの後ろ姿を見ていると虎太郎が小声で耳打ちしてきた。