Engage Blues
とっさにうまい言い訳が思いつかず、一般的なごまかしを口にしてしまう。
子トラ兄弟も何かとんでもないことを言い出すかと冷や冷やものだったけれど、ふたりとも爽やかな笑顔で頭を下げた。
「初めまして。虎太郎です」
「……虎次郎ッス」
まんま、礼儀正しいお兄さんとぶっきらぼうな弟って感じ。
彼らが話を合わせてくれたのかは謎だが、慶さんは別のことが気になったみたいだ。
「こたろう、こじろう……?」
「どちらも『コ』の字は虎ですよ」
関心は、ふたりの名前かぁ。
確かに、今的にはからかわれそうな名前だもんな。
一応、強そうな字面だと教えれば、慶さんは前へ歩み寄る。
距離を詰めるなり、ふたりの頭をわしッと掴んだ。
「どちらもいい名前だな。つけた人は、虎のような強さを願ったんだろう」
髪の毛をかき回しながら優しく笑う。
その仕草は妙に慣れている。面倒見のいいお兄さんみたい。
けど、子トラ兄弟にしてみれば戸惑うだけだろう。
いきなり初対面の人から、そんな子供扱いされても。
と、ハラハラしながら静観していると、子トラ兄弟たちの顔がみるみる緩んでいく。