Engage Blues





「それじゃあ、失礼します」

「気をつけて帰れよ」

 もうすっかり立派な兄貴分となった慶さんも素敵な笑顔で返す。

 食事中も双子はメロメロだった。わたしひとり、ヤツらが余計なことを口走らないか無意味に神経をすり減らした。


 ふたりの帰途を見送ることで、ようやく安堵したと思いきや。


 突然、虎次郎が振り返る。
 いたずらっぽく笑ってる表情に、嫌な予感を覚えた。



「梨花姐、必ず結婚式には呼んでくださいッス!」

「早く帰んなさい!」

 持っていた鞄を振り回して、とっとと帰宅しろと怒鳴る。


 あぁ、厄介なことになっちゃったな。
 あの双子は意外に口が軽い。

 慶さんの存在を『あいつ』が知ったら何をしでかすか……


 って、いうか。
 あの子たち何しに来たんだろう?

 肝心な部分を確認し忘れた。

 この数ヶ月は特に音沙汰なかったのに、いきなり突発的気まぐれな果たし合いだ。

 虎賀家で何かあったのかと、内心で首を捻れば。


「……すまない」

 今度は、慶さんがいきなり謝りだす。
 ちょうどいいから、こっちで頭を傾げてみる。





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