Engage Blues
「もうあんたを亡き者にしてバックレるしか……」
「かなり追い詰められてますねー」
コウを亡き者にして、慶さんと駆け落ちするしかない。
ストレートにあんたを殺すと宣言しても、当の本人はあっけらかんとしている。
わたしに実行できる度胸がないと思ってるのか、返り討ちにする自信があるのか。
元から、コウはわたしの味方じゃない。監視役なのだ。
次期師範の警護という名目は表向きの話。
わたしが勝手な真似をしないよう、常に動向を逐一チェックして報告するのが本来の役目。
今現在の彼の立場は針のむしろだろう。
師範候補のわたしにはそっぽを向かれ、凰上家の師範や師範代は気が気でないイライラをぶつけられる。
その強靭なメンタリティでなければ、とっくの昔にお役御免になってることだろう。根っからのマゾ体質が幸いしたな。コウ。
「……今なんか失礼なこと考えてません?」
「い、いえ。別に」
鋭すぎる勘を適当にごまかす。
とにかく、解決策は駆け落ちなんかじゃ足らない。
もっと根本的な問題を潰すしかないのだ。