Engage Blues
「梨花。わかってますよね。凰上家流闘術は、本来なら女性が継ぐってことを」
突然の攻撃に、何も言えなくなる。
ぐうも出ないほどの鋭い意見だ。
凰上家は、中国に伝わる伝説上の霊鳥·鳳凰を象徴とする武術スタイルを持つ。
元は風を司る霊獣だけど、五行思想の発展から不死鳥や朱雀と同一視され、火炎の性質を併せ持つようになる。
また鳳は雄、凰は雌を意味する。
つまり、凰上家の他に分かれた流派があるってこと。
「兄君たちの継承権は最初から低いんです。有力候補のあなたが辞退するとなると、鳳城家だって黙っちゃいませんよ」
あちらが本家で男子優先みたいな。
ただでさえ、奥義書の数で劣ってるから、女が師範の凰上家には好き勝手されると文句のひとつも言いたくなるだろう。
コウの指摘は、それを端的に表してる。
わたしの我が儘は、他の家にも及ぶってことだ。その覚悟はあるのかって問われてる。
他家を巻き込んで争いになっても貫く意志は、今のわたしにはない。
できることといったら……