Engage Blues





 再び不安が影となって忍び寄ってきた時だ。
 慶さんは、こっちに歩み寄って優しく抱き寄せてきた。


「それとも」


 すすす、と背中を撫でていた手が下の方へ降りていく。



「梨花の身体には、俺が知らない部分がまだあるのか?」


 間近に迫る笑顔に、目眩がしてくる。

 秘密って、そっちですか!
 早く誤解を解かねば、今にも暴かれそうな勢いだ。


「へ、変なこと言って、ごめんなさい」

「そうか。暴き立てて欲しくなったら、いつでも言うといい」

「ないです。ないです。滅相もない」

 ぶんぶんと思いきり首を振る。


 やっぱり、暴く気満々だった。
 そんな特殊アビリティっぽいの、ないです。
 少なくとも身体には。


 全身でアピールすると慶さんも納得してくれたらしい。

 激しく責められることなく、まぶたやこめかみにキスを落とされるだけですんだ。


 う、嬉しいけど、からかわれただけの気もする。











< 71 / 141 >

この作品をシェア

pagetop