Engage Blues





「じゅ、重要なんじゃないですか? 隠し事されてたら気になったり、嫌だったりしません?」

 しどろもどろに説明する。
 普通、黙っていたことがバレたら不信感や怒りが芽生えるんじゃなかろうか。

 それが当然だと思ってた。しっかり顔に出ていたと思うのに、慶さんは首を傾げる。


「それも梨花の一部なんだろう? 大体、人間なら誰しも大小なりに他人には言えない秘密があるんじゃないか?」

 ずっぱりでごもっともな回答。
 男前すぎる論理展開に、何も言えない。


 そりゃ、そうだ。
 誰だって他人には知られたくないことがあるはず。
 数とか範囲の大小は別なんだろうけど。

 うっかり納得してしまいそうな意外な切り口。

 予想外の流れに戸惑う中、慶さんは持っていたジャムの瓶を置いた。


「思うに、秘密は当人が隠そうとするから秘密なんだ」

「はぁ……」

 言葉の意味がわからず生返事。
 それでも、慶さんに気付いた様子はなく淡々と語る。


「いざ事が露見しても、それは他人とって秘密でも何でもないかもしれない」


 それだけは、わたしに限ってないと思う。

 武術を習ってる女が、何でもないわけがない。





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