Engage Blues
「あれ……虎賀さんたちは?」
スマートフォンをかざした慶さんは、ふと気付いたように周囲を見回す。
「きゅ、急用ができたから帰りましたよー」
隣に並ぶわたしは棒読み口調で返してしまう。
正確には三人とも吹き飛ばしたって表現が合ってるけど。嘘をついた罪悪感からか、どうにもそわそわして落ち着かない。
そんな態度を知ってか知らずか。
慶さんは真顔で向き直る。
「梨花。コモドドラゴンが見当たらない」
えッ。そっち?
ずっと探してたの?
あれだけ激しい強風に見舞われたのに、彼はコモドドラゴンを探すのに夢中だったみたい。
「あれ、ごめんなさい。見間違いだったかもしれないです」
素直に謝って事態の収拾を図るも、慶さんは反応しない。
スマートフォンの画面越しに、歩道の先をじっと見つめる。
真剣に探す横顔は、とても素敵……じゃなかった。
見るからに寒そう。そういえば、制服の上に何も羽織ってない。
身内のドタバタに付き合わせてる場合じゃなかった。