私は、アナタ…になりたいです…。
信じていいの…?
金曜日は思っていたよりも早く来てしまった。
朝から浮かない顔つきで仕事をしている私を、近藤さんは軽い咳払いで何度も注意した。


「さっちゃん、スマイルないよ!」


とうとう言われてしまったのは、昼休憩から受付に戻った時だ。


「今日は朝から元気ないし、ボンヤリしているし、何かあった?」


2年先輩の近藤さんは、持ち前の観察力と親切心を発揮する。
この人が受付嬢として何年もこの場所に立っていられるのも、きっとこの二つを兼ね備えているからだ。


「何もありません。ちょっと寝不足なだけです」


言い訳や嘘をつくのが上手くなったな…と思う時がある。
自分の気持ちや思う通りにならないことが多過ぎて、ごまかす事が増えたせいでもある。


「そうなの?ならいいけど…」


近藤さんの顔は不服そうだ。

後輩の私が言うことはいつも一応信用してくれるけれど、心の奥底では、きっと疑ってるに違いない。



(だからって、本当のこと言えないし…)


昼休憩に届いたメールに気持ちが重たくなってしまっていた。

『スマイル王子』こと田所さんは、あれから細々としたメールを送ってきてくれる。
絵文字は勿論、営業先で見つけた物とか食べた物とかの写真を添付したりして。

朝は必ず私に挨拶してくれるようになったし、社食に私が来ない日は『何処で食べてるの?』と聞いてきたり。

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