私は、アナタ…になりたいです…。
「こんな私だけど……田所さんの側に居てもいいですか?きっと誰が見ても不似合いだと思うけど……隣に立っても……いいですか?」



目一杯の願いを込めて尋ねた。


田所さんは優しい瞳を見せたまま




「いいよ…」




一言だけ囁いた。



見慣れた筈の笑顔がいつもと違う気がした。

ぐっ…と胸の中に熱いものが込み上げてきて、我慢しきれずに涙が溢れた。


髪を触りながら、彼が優しく頭を撫でる。

大きな掌の温もりが少しずつ胸の中のわだかまりを溶かしていく。

ほっこりと安心させてくれる彼の温もりに、ずっと包まれていたい……と思った。






「……焦ったよ」


泣き止んだ私から手を離した彼が、大きな息を吐いて体をぐっと前のめりにした。
腕組みをした手の上に頭を乗せ、はは…と小さく笑う。


「今一瞬、別れを切り出されるのかと思ってヒヤヒヤした。やっと付き合えるようになったのに、それだけは勘弁って言おうかと思った…」


良かった…と心の底から息を吐き、前のめりになった姿勢のままで私の顔を覗き込んだ。


「昼間階段で言おうとしたことはね、今夜また一緒に『かごめ』へ行かないか…って誘いたかっただけなんだ。でも、あの時の河佐さんの目が真っ赤で痛そうだったから、先にコンタクトを外させた方がいいと思ってやめた…」


安心した様に話し始める彼のことを見続けた。
普段とは全然違う笑みの柔らかさに、自分の気持ちがどんどん引き込まれていくのが分かる。


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