強引上司とオタク女子

「はい。すみません」

「ん。……やっぱ川野いいな。面白い」

「面白いくらいでからかわないでくださいよ」

「からかってはない。分かってないみたいだから言っておくけど、俺は本気だからな」


本気……嘘だぁ、ついこの間まで梨本さんのこと好きだったんでしょ?


「国島さんの本気は信用なりませんもん。振られたばっかりだから誰でもいいだけでしょ?」

「お前はどうして自分をそんなに過小評価するわけ? ふつーに恋愛対象になるだろ。独身でそこそこかわいい顔してんだし、面白いし」


面白いはラブの条件に入るのか?
疑問に思いつつ、私はモゴモゴと小声で言い返した。


「……オタクですもん」

「そこは趣味だろ。俺は別に個人の趣味にまで口だす気は無い」

「私コミケとか行きますよ」

「行けばいいだろ。暇な時はついてってやるよ」


あれ?
予想外に動じないな。

実は好条件か?

私が怯んだのに気づいたのか、国島さんがにやりと笑って顔を近づけてくる。


「どう? 俺と付き合う気になった?」


不覚にもドキドキする。
いやいや、でもやっぱり。


「……やめときます」

「意地っ張りだな」

「国島さんがダメとかじゃなくて、私自分が恋愛する想像が出来ないんですもん」


それは本音だった。

仕事でも恋愛でも、私は必要ない女。
いくらでも代わりの聞く存在。

そんな風にあろうとしてきたし、それでいいと納得している。


「……なるほど。分かった」


お、これで諦めてくれるのかな。
ホッとして笑いかけると、嫌な笑いが返ってくる。


「想像できるようになればいいわけだな」


そのまま、国島さんは会議室を出て行った。


カミサマ、仏様。ミカゲ様。
どうやったら国島さんに私の言葉が伝わりますか?


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