柚と柊の秘密





「戸崎」




不意に健吾君に呼ばれ、びくりと飛び上がった。

心臓がバクバク鳴る。

はぁー、健吾君は心臓に良くない!





「な……なに?」




努めて冷静に。

そう思い、笑顔で健吾君を見る。

だけど、あたしの顔はきっと引きつっているだろう。

そして、きっと真っ赤なのだ。

健吾君に呼ばれるたび、視線が合うたび、顔にどっと血が回る。

本当におかしいよぉ、あたしの身体。






健吾君は怪訝な顔であたしを見る。

その表情を見るだけで、あたしを好きでないことが丸分かりだ。

そして、あたしはいちいち心を痛めてしまう。




だけど、




「暇なら飯でも行くか」




健吾君の口からは超意外な言葉が漏れる。





け……健吾君とご飯?

とんでもないよ。

今ですらこんな状況なのに。

健吾君とご飯行って、何の話したらいいの?





なのに、嫌と言えなくて。

それより、何だか嬉しくて。

首を縦に振るあたしがいた。





あたしの馬鹿。

何考えてるんだよぉ。

出来たら早く家に帰りたい。

そして、ギターの練習したいのに。




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