柚と柊の秘密






「何でそんなことするのか?」




健吾君の声は静かで。

何を考えているのかも分からない。

ただ、健吾君の顔を見るのが怖くて怖くて。

あたしはごめんなさいと小さく謝る。





だが……




「戸崎」




呼ばれると、飛び上がりそうになる。

どんなに酷い言葉があたしを襲うのか。

どれだけ健吾君をがっかりさせたのか。

知るのが怖くて。





「ご……ごめんなさい。

騙すつもりはないの」




あたしの口から出るのは、必死の言い訳。



あたしって醜い人間だ。

騙すつもりはなかったんじゃなくて、騙すつもりだったのに。





「ごめんなさい!!」




あたしは叫んで店を飛び出していた。






あぁ、最悪の終わりかただ、あたしの恋。

健吾君、優二君たちにも言うのかな。

あたし、クビだよね。

そして、変態になっちゃったね。

やっぱり無理なんだよ、柊になることなんて。







家に帰り、バタバタと階段を上り、あたしの部屋に閉じこもった。

外は晴れているというのに、あたしの心は雨。




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