柚と柊の秘密
「お父さんは確かにかっこいいし、有名だよね。
でも、それだけじゃないよ」
「?」
「お人好しのところとか、ムードメーカーなところとか、弱いところとか。
お母さんはお父さんの全部が好きだな」
馬鹿夫婦め。
だけど、正直羨ましい。
親父とオカンは絵に描いたような幸せ夫婦だ。
オカンは俺を見て、楽しそうに笑った。
「柊も本当に好きな人には、柊の全てを受け入れてもらえるといいね」
俺の全てか……
山形は俺の全てが嫌いだもんな。
能天気なオカンには分かんねーだろうな。
「ありがとよ」
俺はぶっきらぼうにそう言って、階段を上がった。
さぁ、オカンののろけ話は忘れるとするか。
どうせ俺の恋はうまくいかない、秘密の恋だから。
明日もまたバトルだ。
浅井、今日の一件で怒ってるだろうな。
何も知らない俺は、そんなことを考えていた。