吸血鬼、頑張ります。



体育祭名物

【魔壁迷宮】



ひより達の学年がスタートする。


「じゃあ、分岐点まで行ったら二人ずつ別れて進もう」


ひよりのクラスの作戦は、分岐毎に隊列10名から2人を切り離して、別れて進む作戦の様だ。


「まず、ひよりちゃんとカナメ君の二人が、あの分岐の左方向へ進んでくれ」


リーダーが、先に見える迷路の分岐点を指差しながら指示を出す。


「出発してそろそろ3分経過したね?
白組も来る頃だから、気を付けて進んで」


リーダーの指示に従って、ひよりとカナメは左の分岐に入った。



「カナメ君。宜しくね」

「うん。任せて!」



カナメは四年生ながら、魔導の実力はかなり高かった。


リーダーは、ひよりのハンデをカバーする意味でカナメと組ませた。


カナメは床に手を触れ、足音を確認する。


「大丈夫。まだ、こっちには誰も来ていないみたい」


カナメは察知能力が高い魔導師だった。



二人は、先へ進んでいく。



暫く進むと、また分岐点が現れた。


二人は左に曲がり、路なりに進む。


「ひよりちゃん。こっちの分岐は間違いだったみたいだよ」


どうやら、ループゾーンの外れコースだった。


「じゃ、元の路に戻らないとね」


ひよりは引き返そうとしたが、カナメがそれを止めた。


「ちょっと待って・・・。誰か来たみたいだ」


カナメはひよりをしゃがませた。


どうやら、白組も間違って、こっちの路に入ってきたようだった。


「気配から察するに、白組の生徒が六人くらいかな・・・」


カナメは小声でひよりに言った。


「ど、どうしよう。」


カナメは考える。


「そうだ・・・」




「あれ?行き止まりだ。」

「こっちじゃなかったみたいだね」


白組の生徒の声が聞こえる。


「じゃ、引き返そうよ」


白組の生徒達の足音が遠ざかっていった。



カナメはとっさに壁を構築し、白組の目の前に壁のコピーを作り出して見せた。


実際に壁は存在しない。
何故なら鏡の様に壁を反射させて、壁があるように錯覚させていたからだ。



見事に作戦は成功した。

勘違いした白組の生徒は、壁があるものだと勘違いして引き返していったのだ。



「カナメ君、凄いね」

ひよりは感心して言う。

「結界の一種に使う魔導なんだ、これ」


カナメも安心したように言った。



二人は、元の路へと戻る。



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