吸血鬼、頑張ります。



みさきの提案は最もだった。


虔属に成っていないひよりの弟琢磨は、勿論人として生きるべきであり、僅か3歳にして妖怪と人の境界を決めるには早すぎる。


無論、琢磨に決める意思がない。


姉のひよりは、幼いながらも自死と言う選択肢を選び、結果吸血鬼として生きる事になった。



みさきは全てを話すまでもなく、弟を引き取ると言う一言だけでそれを全員に問いかけていたのだ。



香織は言う


「みさきさんの言う意味は解っています。
しかし、未だ幼い姉弟なんですよ?
一緒に居る事は出来ないんですか?」



「香織さん。
あなたは方は姉妹で一度死亡し、吸血鬼によって生き返りました。
それはもう、そちら側の住人に成ったと認定されております。
ひよりさんはやはり同じく自死を目論みましたが、生きていたため吸血鬼に成りました」


「この二つのケースは、我々魔導師組合が吸血鬼の虔属として認めた事案ですから、蕪木家の所有虔属で何も問題在りません」



「だったら、琢磨君もいずれは虔属に成るかも知れないと言う事で、ひよりさんと一緒に此処で暮らしても良いではないですか?」


香織がみさきに精一杯抗議をする。



みさきは溜め息をついて話を続けた。


「香織さん。
貴女が仰る、姉と弟が一緒に暮らすと言う倫理観は、人にしか当てはまりません。
貴女方はもはや人ではないのです。
我々魔導師組合は、妖怪から人を守るのが仕事です。
たとえ、生前肉親であろうと無かろうと、吸血鬼に幼い子供が拐われたと言う事実のみが、ひよりさんの弟を保護する目的なのです。」


みさきは冷静に、しかし力強い語気で話す。


「仮にこの申し出を反故にした場合、魔導師組合はあなた方を殲滅させなければ成りません。
我々が認知した以上、弟の琢磨君を吸血鬼化させた場合も、同じです」


ひよりはテーブルに顔を伏せて泣き出した。


鉄観音は黙って琢磨を抱いている。

香織と沙織もうつ向き、イブは目を閉じたまま話を聞いていた。


琢磨は無邪気に笑う。

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