クールな女上司の秘密
結局、俺達は一言も言葉を交わさずに行き先の会社に着いてしまった。いくらチーフが無口と言っても、全く会話がないのは珍しい。
ああ、そうか。いつも俺から話しかけて少し話すんだったな。今日は俺がそれをしなかったから、って事か……
「佐伯さん、こんにちは」
受付に向かって歩いていたら、横から女性に声を掛けられた。顔は覚えているが、名前は聞いたかもしれないが忘れてしまったその女性は、この会社の社員で、たぶん俺より若いと思う。
「こんにちは。おじゃまします」
たとえ年下であろうと、相手はお客様なわけで、俺は足を止めると、その子に向かって丁寧に頭を下げた。
「今日も打ち合わせですか?」
「はい、そうです」
「大変ですね」
「いえ、仕事ですから……」
「あの……」
「はい?」
「お昼とかは、どちらで食べるんですか?」
「昼飯とかですか? えっと、それは……」
なんでそんな事を聞くんだろう。この会社には社員食堂があり、時間がない時はそこで食べさせてもらうが、そうでもない時は外に出てどこかの店で食べたりするのだが、それをそのまま説明すべきなんだろうか。
ちなみに今日は午前中だけの打ち合わせだから、昼飯は会社に戻る途中にどこかへ寄って食べると思うが、それを言うべきなのか。などと迷っていたら、
「鈴木さんが待ってるから」
数メートル先で立ち止まっていたチーフから、小声ではあるが、いかにも不機嫌そうな声で言われてしまった。
ああ、そうか。いつも俺から話しかけて少し話すんだったな。今日は俺がそれをしなかったから、って事か……
「佐伯さん、こんにちは」
受付に向かって歩いていたら、横から女性に声を掛けられた。顔は覚えているが、名前は聞いたかもしれないが忘れてしまったその女性は、この会社の社員で、たぶん俺より若いと思う。
「こんにちは。おじゃまします」
たとえ年下であろうと、相手はお客様なわけで、俺は足を止めると、その子に向かって丁寧に頭を下げた。
「今日も打ち合わせですか?」
「はい、そうです」
「大変ですね」
「いえ、仕事ですから……」
「あの……」
「はい?」
「お昼とかは、どちらで食べるんですか?」
「昼飯とかですか? えっと、それは……」
なんでそんな事を聞くんだろう。この会社には社員食堂があり、時間がない時はそこで食べさせてもらうが、そうでもない時は外に出てどこかの店で食べたりするのだが、それをそのまま説明すべきなんだろうか。
ちなみに今日は午前中だけの打ち合わせだから、昼飯は会社に戻る途中にどこかへ寄って食べると思うが、それを言うべきなのか。などと迷っていたら、
「鈴木さんが待ってるから」
数メートル先で立ち止まっていたチーフから、小声ではあるが、いかにも不機嫌そうな声で言われてしまった。