その瞳をわたしに向けて


「………へぇ、去年の報告会での今年の売上目標……って勉強か?」

手に持ったファイルをペラペラとめくった後、感心しながらそれを手渡された


「………ただ片付けてただけ、だってここら辺順番バラバラなんだもん」

ファイルを受け取って本来の場所に戻すと、その後ろからまた煙草の香りをさせたスーツがフワリと覆い被さり、大きな手が頭を撫でる


「そうだ、美月は片付け癖があるからなぁ……」


頭の上からそう言ってクスクスと笑う


「………」



***

あの日、自由にくつろいでいろなと言われた松田のいない部屋で、何気に積まれていた本や雑誌を横目に、掃除機が置かれているのを見つけて………

つい……掃除機をかけて、布団を干して、シーツも洗濯して、雑巾かけまで……

松田が帰ってきたのに気がつかず、風呂掃除をしてたら……

「なんだ………玄関開けてシャワーの音がしてたら普通テンション上がるだろ……なんで服着て風呂場にいるんだよ……」


「えっ……?あっ、お帰りなさい」

気がつけば日も堕ち始めていた

掃除してたのか?っと部屋の中を見渡し感心され、それぞれ特技ってあるもんだと頭を撫でられた


そしてその後、二人で鈴政へ行って……
如何にも男物のTシャツを着た美月が、
松田の後ろにいるのを見た美鈴ママは目を輝かせた

「ちゃんと成るように成ったのねっ」

そう言って喜んでくれた

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