その瞳をわたしに向けて

美月 side



ああ………なんかやっぱり疲れる

会議のお茶の片付けをしながら給湯室で溜め息をつく

一日中、立花さんが何で休んだんだろうとか、松田さんの視線に入らないようにとか、頭の中がぐちゃぐちゃして集中できなかったけど 


だけど何で忘れてたかなぁ、この人の存在を…………


「……杉村常務」


「ごめんね、今いい?」

これが、ちょっと前だったら飛び上がるほど嬉しかったのに…………
一度、拒否された反応を思い出すと身体が強張る

「あのぅ、立花さんとはあの後…………」

まさか喧嘩別れしたなんて、ないよね

「大丈夫、まあ……だいぶ彼女には怒られたし、喧嘩もしたかな。でも心配しないで、ちゃんと説明したから」

常務がいつもの柔らかい笑顔を見せてくれて、美月は幾分ホッとした

「君への態度も悪かったって反省してるよ、申し訳なかった」

ちゃんとピンポイントで謝ってくれる所が大人だなぁ

「いえ、私も勝手に入り込んだりして、まさか眠ってるなんて知らなくて……」


杉村常務が人差し指を口の前に当てて優しい笑顔をしてくれた

「いつも、あんな風にサボっているのがばれてしまったね」

…………確かに、ふふっと頬がゆるむ

あれ…………?


この人に対して、なにか色々疑問や憤りがあったはずなんだけど、なんでだろう………? 

なんだかこの間よりスッキリしている


今にして思えば、イタズラ心に立花さんの真似して声を掛けたのがいけなかったんだし

いつもあんな風に立花さんにキスするんだ………って思うと、嫉妬心が出てくるどころか、逆にちょっと得した気分になっていた


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