キミに出会うまで
森さんは、家まで送ると言い張って。


最寄り駅から自宅まで、おしゃべりしながら歩いた。



「ここです」


「実家なんだな」


「そうです、だから『あがってお茶でも・・・』ってのはないですから」


「なんだ、ないのかよ」


「今日はありがとうございました、おやすみなさい」


「おやすみ、また明日な」



駅に戻っていく背中を見送った。


追いかけて、『まだ一緒にいたい』って言ったら。


きっと、困った顔して笑うんだろうな。



だから、この気持ちは封印するんだ。


もう誰も好きにならないって、決めたんだから。


少し、胸が苦しいけど。


この痛みにも、すぐに慣れるはず。





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