キミに出会うまで
月夜
出勤途中、優樹に『誕生日、泊まれるよ』と連絡したら、すぐにスマホがふるえて、『マジで?すげー嬉しい』と返ってきた。



優樹は、何を作ってくれるんだろう。


誕生日を好きな人と一緒に過ごすなんて、久しぶり。


てっちゃんとは、それなりに楽しい誕生日を過ごした気がするけど。


どこか後ろめたいところがあるからか、心から喜べなかったのかもしれない。



29歳と30歳って、今までと同じようにひとつ歳を重ねるだけなのに。


なんか、特別な感じがする。


12月31日から1月1日になるのも、同じ一日を重ねるだけなのに、新しい年を迎えるから特別な一日だっていうのと似てるかも。


2月1日の誕生日まで、優樹とは会社で会っても、会社帰りにどこかへ行くことはなかった。


たった数日だけど、優樹が誕生日のために何かしてくれてるんだと思って、会えないのを我慢した。



そして、誕生日当日。


必要なお泊まりセットを持って自宅を出て駅に向かおうとしたら、優樹が家の前で待っていた。



「おはよ」


「おはよう、びっくりした」


「今日はサプライズ続きにしようと思ってさ」


「えー、なんだろう?」


その時、家の玄関が開いてお母さんが出てきた。


「おはようございます」


「おはよう優樹さん、優花のことお願いね」


「はい、楽しんできます」


「お母さん、いってきます」


「いってらっしゃい」




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