キミに出会うまで
距離
「それはつまり、渡辺さんにひっかきまわされて、こじれてるってことだ」


明日香先輩にズバズバ言われ、ヘコみ続けている私は、容赦なく言葉を浴びせられる。


「もうすぐ1週間ですよね、仲直りしたらどうですか?」


ひとみちゃんは簡単に言うけど、そうできるんだったらとっくにしてる。


楽しいはずのランチも、何だか味気ない。



あれから一度も、ふたりで会っていないし、マンションにも行っていない。


お互いに過去があるのはわかってるけど、いざその「過去」が目の前に現れると、動揺するに決まってる。


いまの優樹はそういう状態なわけで。


会社で会っても、挨拶するだけ。


付き合い始めてから、こんなことなかったから。



先週末、家でゴロゴロしてる私に、


「あら今日は優樹さんのとこ行かないの、珍しいわね」


傷口に塩をすりこんでくるお母さん。


「ケンカしたなら、さっさと仲直りしなさい」



大人なのに情けないけど、それができないから困ってるんだよ。



言い返す元気もない私は、優樹と離れる辛さをかみしめていた。


今ごろ、優樹は何してるだろう。


まだ怒ってる?







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