気になるパラドクス
今回は私が悪いかったみたいだから、今後は気を付けよう。

冷蔵庫にしまっておいた冷やご飯を、レンジで温めながら頷いた。

「じゃあ、お互い様ってことにしておいて」

手に持ったフライパンをくるくると回してから火にかけ、油を入れてからちょっとだけ笑う。

「で……何を食わせてくれんの?」

「何となくオムライス」

「オムライスって、何となく作れるもんか?」

懐疑的な顔をする黒埼さんを振り返り、片眉を上げて指を振る。

「だから“何となく”オムライス」

まぁ、適当にケチャップライス作って、適当に卵の焼いて乗っけるだけたもんね。

プチトマトがあるから、横に乗せるとして、黒埼さんはどれくらい食べるのかな。

「あ。そう言えば、何か嫌いなものある?」

材料を炒めながら聞いたら、真剣な声音の呟きが返ってきた。

「嫌いなもの? そうだなー……寒いのが嫌いだ」

「…………そう」

笑顔のままで頷きながらも考える。どうしようかな、この男は。

確かにそれは“嫌い”なんだろうけど、今はそんなことは聞いてないのねー?

「エアコンのリモコンがテレビの横にあるから、勝手につけて。それから、嫌いな食べ物を教えて」

「香草」

今度はずいぶん範囲が広すぎる。

機械的に手を動かしながら、じろりと彼をまた振り返った。

「……もしかして、私はからかわれてるの?」

「そう思わなかったのか?」

……あら、どうしよう。わかりにくい人だとは思っていたけど、本気でわかりにくいのかも。

「美紅にひと言だけ忠告しておくかな」

腕を組ながら背もたれに寄りかかり、その上に顎を乗せながら真面目な顔をする黒埼さん。

「忠告?」

「うん。美紅が俺と何となく付き合い始めたのはわかってるが、何となくで終わらせるつもりはないから、心しておくように」

どことなく粛々と言われて眉をひそめた。

……私は、もしかして早まった事をしたのかな?










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