一目惚れの片想い
帰ろう?
俺達は、仕事終わりに

皆で、鈴木さんのところに行くのが

日課と化していた



「いつまで寝てんだよ…」

吉岡さんが鈴木さんの頭を撫でる

いつものように、うっすらと目を開けた

「かなで!!」

「鈴木さん!!」

「こ…こ…ど…こ」

1ヶ月喉を使ってないから、うまく喋れないらしい

吉岡さんがナースコールを押し

鈴木さんの覚醒を知らせた



朦朧としているけど、まばたきをして

俺達を見たりする



一旦部屋から出された


「ご家族の方」

看護師さんから呼ばれ

吉岡さんが中へ


しばらくして、医者と看護師さんが部屋を出た


吉岡さんが最後に出てきて


「奏……奏が……」


吉岡さんらしくない動揺した姿

「どうしたんですか!?」

「記憶が5年分消えてる」






それって、俺らのことを忘れたってこと?


「鈴木さん!!」



部屋に入ると、首を傾げる


「奏、わかる?」

「玲音くんの…友達?」

「うん、正解!奏、田中君だよ」

「はじめ…まして…」


たどたどしい

鈴木さんの喋りが可愛い

でも、吉岡さんの言う通り、俺のことを忘れていた


吉岡さんを玲音くんと呼び


「帰ろう?」

「まだ、帰れないよ
明日、検査とかあるって言われただろ?」

「春陽…泣いてない…かなぁ」

「大丈夫、ちゃんといい子にしてるよ
奏もいい子にできるよな?」

「うん!」




病室を出た後、吉岡さんは、トイレに駆け込み吐いた

その背中を必死に擦った


「田中君…奏がっ」

「すぐ思い出しますって!!」

「奏が…田中君を忘れるなんて…
そんなこと…」


泣きながら、吉岡さんは、また吐いた

ものすごく、我慢して手放した鈴木さんが

こんな形で戻ってきたんだ

鈴木さんの前では、何事もないように

振る舞った吉岡さんが、凄い


「田中君… ちゃんと、思い出させるから」



どうして、こんなにも

俺を応援してくれるんだ?


いつも、聞けないでいる





なんで?







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