一目惚れの片想い
いらない…
面会時間が終わり

会えなかった


翌日



午後、外出ついでによろう!
ということになり

病院へ


看護師さんから、部屋に行く前に

「朝も昼も、食べなかったんです
それから、大畠さんという方が今日も来ました」

教えてくれた


いつものように、明るく

部屋に入るけど


今日の鈴木さんは、まるで

感情をどっかにやったみたいに


ただ、まばたきをしていた


「奏…どうした?」


吉岡さんの問いに、答える気配もない


吉岡さんが鈴木さんの頭を撫でる


「何か言われた?」


チラッと吉岡さんを見て

ゴロンと布団にくるまり

うつ伏せになった


「か~なで?なんで、隠れるの?」


「ひとりになりたいの!!!」


「そっか…
俺ら、仕事中だから、また夕方くるな!」


そっとしておこう

というよりは、どうしていいかわからないから

俺達は、部屋を出た


吉岡さんは、鈴木さんがこんなことになってから、ずいぶん痩せた

元々、細マッチョだった

今は、細いだけ

知ってる

時々、吐いてるのを


吉岡さんにとって、鈴木さんの存在が
どれだけ大きいのか、思い知らされる


夕方



「いらない…」

いつもより早くに病院へ

ちょうど夕食だった


「鈴木さん!何か食べたいものない?」


「いらない…」


夕食も食べなかった


「ねぇ?湊さんって人
本当に父親なの?コレ…」


週刊誌にスクープされた

SouとPP社長の記事

鈴音さんだな!!


「奏、こんな記事と俺
どっちを信じる!?なぁ!?」

「……玲音くん、覚えてないの……
こんな写真に心当たりないの…
あたし、おかしい!
なんで、モデルやめたの?
春陽…春陽…に会いたいよ…
玲音くん!!帰ろうよ!!」


「奏…もう、あの家はない
俺は、春陽と暮らしている
奏は、あの家のすぐ近くのマンションに
ひとり暮らししている
奏…俺の両親、亡くなったんだ
それから、モデルを辞めたんじゃない
辞めさせたんだ
俺と湊さんが、奏を守る為に」

「わからない……よく、わからない」

「昼間に来た夫婦に何を言われた?」

「契約書?……にサインして欲しいって」  
!!!!!!!

ふざけてる

これが、母親のすることか!?


「したのか?」

「怖かったから、しなかった」

「偉いな!奏!!
よし!!ご褒美に、お医者さんに早く退院できるように、お願いしてやるな!!」

「本当!!嬉しい!!」


鈴木さんは、ニコニコと吉岡さんを見ていた


その笑顔がこちらを向くことなんてなくて



それが、フラれた現実と妙に重なった



鈴木さんは、なんで俺を忘れたんだ?

なんで、俺達はつきあえなかったんだ?











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