ナニカ 〜生んで、逃げて、殺される物語〜



別れ際の敬太の様子が何となくいつもと違うことが、真斗の心に引っ掛かっていた。


笑顔が微妙に固かったし、拳をぎゅっと握りしめて、まるで殴り合いの前に静かに闘志を貯めているような……。


家で夕食を食べている最中に、真斗はハッと気づいた。

渡されたメモ用紙に書いてある、本当の呼び出し時間は違うんじゃないかって。


真斗はメモ用紙を直接見たわけじゃなく、敬太が『17時45分だ』と言ったのを聞いただけ。


敬太はどうしても一人で行くつもりで、一芝居打ったんじゃないか?

本当の呼び出し時間は、もっと遅い時間なんじゃないか?



それに気づいた真斗が、すぐに敬太に電話を掛けたけど繋がらなかった。


慌てて自宅を飛び出して自転車で敬太の家に行くが、敬太のお母さんに『まだ帰ってきてないよ』と言われてしまう。


それで、さっきまでいた河川敷まで自転車を走らせたけど、敬太も先輩たちの姿もない。


まさか、敬太が白状した呼び出しの場所も、嘘だったのか?

本当の場所って、どこなんだよ‼︎



そんな風にパニックになった真斗は、自転車であちこち探し回りながら、私に何か思い当たる場所はないかと、電話を掛けてきたみたい。


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