空蝉


カイジは出社して早々に、自分のデスクでうな垂れた。



イベント企画会社の代表。

それが今のカイジの肩書きだ。


主にクラブやライブハウスでの催しの際に、プロモーションやキャスティングなどの裏方事務を一手に引き受ける会社を経営している。


学生時代、やたらと人気だった翔やヨシキの所為で無駄に顔が広くなったが、今となってはそのおかげで、カイジは身を立てることができているのだ。

何だかなぁ、と思う。



「あら、浮かない顔しちゃって、どうしたの?」


顔を上げると、派手な化粧と巻き髪で、香水の匂いを撒き散らしながら寄ってくる、エミが。



エミはどこぞのキャバクラでナンバーワンを張っている女だ。

高校の時のひとつ上の先輩で、昔から、学校で1番の美人だったわけだが、性格はあまりいいとは言えない。


あの頃から因縁浅からぬ間柄のエミは、



「そんな顔してたら、あんた、怒ってるみたいに見えるわよ」

「放っとけ、ブス」


カイジは舌打ち混じりに返した。

エミは困った子供でも見るような目で肩をすくめ、



「相変わらずな男ねぇ」


と、半ば呆れ気味だった。

それこそ『放っとけ』だと、カイジは思った。



「で、何の用だよ。用がねぇならさっさと出て行けよ、ブス」

「ブス、ブス、って。失礼しちゃう」


と、口を尖らせながらも、エミは高級ブランドのバッグから、茶封筒を取り出した。

それをカイジのデスクに置き、



「充からよ。あんたに渡してって頼まれたの」
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