十八歳の花嫁

第10話 微笑

第10話 微笑





五分もかからなかったように思う。

藤臣は三人にリビングで待つよう言い、奥の部屋に引っ込み、すぐに戻って来た。
白いシャツを着て朝と同じスラックスを穿いている。ベルトはちゃんと締めていたが、ネクタイは結ばず首にかけただけだ。
白蝶貝のカフスボタンを留めながら、藤臣はソファに座る愛実の隣に腰かけた。


「婚約なんて嘘だろう? 第一、おばあ様が認めなければ正式なものとは言えない」


藤臣が戻るまでの間、和威は愛実に言い続けたが……。
彼女は沈黙を貫いた。

由佳もしばらくは微動だにせず、やがて藤臣とは反対側のドア――玄関に向かう方に消えた。

由佳がお茶を手に現れたのは、藤臣がソファに座った後だった。


藤臣は軽く咳払いすると、


「昨夜、正式にプロポーズを承諾してくれた。彼女は婚約者の西園寺愛実さんだ。愛実――本社秘書室の奥村くんだ。君の知ってる瀬崎の下だと考えてくれていい」


最初の言葉を和威に向かって、続けて由佳に愛実を紹介した。

愛実は彼女の名前を聞き、


「はじめまして、西園寺愛実です。あの……携帯に出られたのは奥村さんですよね? どうもすみませんでした。お仕事の邪魔をしてしまって」


愛実の言葉に、由佳より先に反応したのが藤臣だ。


「携帯? 愛実、私に電話をかけたのか?」

「はい。お話があって……でも、お忙しいときにかけてしまったみたいで」


彼は少し考えるような仕草をした後、チラッと由佳を見る。

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