十八歳の花嫁

藤臣の説明に由佳もやっと理解できたとばかり、大きくうなずいた。


「そういうことでしたか。でも、あんなにお若いお嬢様なら、ご結婚は数年先かしら? それまでは秘書の私が充分にサポートさせていただきます。もちろん、お嬢様のご機嫌を損ねるような真似は」


バサッと音を立て、藤臣は資料を閉じた。

そのまま小さく息を吐き、由佳に視線を向ける。


「プライベート用の携帯には出るな、と言っておいたはずだ」

「申し訳ありません。西園寺様のお名前を聞いておりませんでしたもので……」

「着信履歴を消したことは?」


由佳は口元を引き結ぶと、「単純な操作ミスです。申し訳ございません」しゃあしゃあと言い訳をする。

だが、三文芝居なら藤臣も引けは取らない。


「なるほど……。では、秘書室から新しい人間を廻してもらうことにしよう。携帯の使い方も知らない秘書は不要だ」

「私の……仕事ぶりには、充分ご満足いただけていると思っておりましたのに」


由佳の声が震えている。“満足”がベッドの上での仕事ぶりを指すのは明らかだ。


「満足?」


仮面のような藤臣の顔に表情が浮かんだ。

それは愛実に見せる笑顔とは違い、愛人を見下す男の冷笑。


「私は君に与えられた以上の対価を払ってきたつもりだ。不満なら新しいボスを見つけてくれ」

< 121 / 380 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop