十八歳の花嫁

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取り付く島がない、とは藤臣の態度のことだ。

独身の藤臣にとって秘書やモデルとの関係は別に秘密でもなんでもない。ギブアンドテイク、由佳との間にあるのもそれだけ。

この男に人並の感情はあるのだろうか、と由佳は考えたことがある。

由佳自身、ボスに恋しているわけではない。
女の中にありがちな感情のひとつ――独占欲とプライドで、愛実に対抗したにすぎない。

由佳の中で、最大の敵はモデルの久美子だった。

マスコミの取材を受けるような華やかな席で、藤臣は決まってパートナーに久美子を選ぶ。宣伝のためとわかっていても、容姿が劣ると言われているようで……。

由佳を嘲笑する久美子の目に、何度悔し涙を流したか知れない。

あの久美子が藤臣の妻になれば、最悪だと思っていた。
だが、彼が選んだのは十八歳の高校生。

それを知ったときの久美子の顔を想像し、ほくそ笑む由佳だった。


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