十八歳の花嫁

――別れてもいい、君が代わりに相手をしてくれるなら……。


藤臣はその言葉を飲み込みながら、「君はどうして欲しい?」と尋ねる。


「わたしは……わたしは……わたしには、そんなことを言う資格がありません」

「資格は関係ない。君はどうして欲しいのか? と聞いてるんだ。答えてくれないか?」

「わたしは……嫌です。でも」

「わかった。関係のある女性とは結婚までにすべて手を切る。ああ、そんな顔はしないでくれ。君に代わりを求めるつもりはない。婚姻中は結婚の誓いを守って、誠実な夫であることを約束する。だから、君もひとつだけ約束して欲しいんだ」


愛実の表情が変わったことに、藤臣は機先を制したつもりだった。

まさか「君を求めるつもりはない」という言葉が、愛実を傷つけたとは思いもせず……。


「私に誠実であって欲しい。和威はもちろん、婚姻中に他の男とだけは」

「あ、あたり前です! そんなこと、わたしはしません!」

「いや、すまない。誠実でない女性しか知らないんだ。だから……」

「美馬さんは、誠実でない女性が好きなんですか?」


唐突な愛実の質問に、藤臣は声を失った。


「あ、ごめんなさい。そういう方と付き合っている、ということは、好きなタイプなんだと思いまして。でも、わたしなら嫌です。お付き合いしている男性が他の女性とも――なんて。色々親切にしていただいて、美馬さんには感謝しています。美馬さんは素晴らしい男性だと思うけど、そういう所だけは尊敬できません。生意気なことを言って、ごめんなさい」


愛実の言葉は衝撃だった。

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