十八歳の花嫁

どうも、失言が続いている。

本来、藤臣はこれほどうっかり口を滑らせる男ではない。
他人の中で育ち、ギリギリまで神経を張り詰め生きて来た。それが愛実の前では、何もかも調子が狂いっ放しだ。


玄関からリビングに移動し、ベルベットのソファに愛実を座らせながら藤臣は口を開いた。


「黙っておくのもアレだから、言ってしまうが。奥村とはそれなりの付き合いがあった。君も本当は気づいているんだろう?」

「それは、まあ。そんなに子ども扱いしないでください」


藤臣は軽く頭を下げ、「――申し訳ない」と愛実に謝罪する。

すると愛実から、暁や信一郎、和威に受けた忠告を聞かされた。どれも、藤臣に複数の恋人がいるという話だった。


「その……そういう方がいるのに、わたしと結婚してもいいんですか? 形だけとはいえ、わたしだったら、絶対に嫌です」


藤臣は深いため息をつき、愛実の隣に腰を下ろす。


「恋人はいない。私には人を愛することができないんだ。女性に幻想が抱けない。ただ男だから……厄介なことに欲望だけはあって、愛情がなくても女性の身体には反応してしまう。君は軽蔑するかもしれないが、彼女らとはそういう関係なんだ」


色々考えていた言い訳はいつの間にか消え去り、有りのままを告白していた。


「あ、あの……」


愛実は頬を薄っすらとピンクに染め、真っ直ぐ藤臣の顔を見た。

ふたりきりでそんな顔はやめてくれ、と叫んでしまいそうだ。


「男の人はそういうものだ、と聞いてことがあります。だから、仕方がないのかもしれませんけど……結婚しても、あの方たちとお付き合いは続くんですか?」

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