十八歳の花嫁
愛実は言葉もなく、弥生の消えた方向をジッとみつめていた。
「驚いただろう? 悪かったね。君には聞かせたくなかったんだが」
振り返れば、美馬も立ち上がり窓際に近寄っている。
幅の広い桟に腰かけ、思いがけず優しいまなざしを愛実に向けていた。
「おばあ様は……やっぱり、祖父のことを恨んでいらっしゃるんですね。結婚を許してもらえなかったことに、心残りというか……わだかまりがあるんだと思います」
考えたくはないが、愛実に対する思いは親切心ではなく、仕返しのつもりが大きいのかもしれない。
信一郎が最初に言った言葉が真実に近いのだ。
そう思うと、少し切なく、そしてホッとした。
「でもよかった。おばあ様を悲しませることになるんじゃないか、と不安でした」
和威を選んで欲しかったが、信一郎に継がせるくらいなら藤臣のほうが……。
弥生の気持ちがその程度で済んでよかったと、愛実は安堵していた。
「君は、優し過ぎる。人間はもっと汚いもんだ。そんなんじゃ、いずれ悪党の餌食にされるぞ」
最初は藤臣の冗談かと思ったが、彼の瞳があまりに真剣で、愛実は一瞬戸惑った。
「あの……でも、そのときは……美馬さんが守ってくださいますか?」
笑いながら愛実は本当の気持ちを言葉にする。
だが、「ああ、婚姻中はそのつもりだよ」藤臣は心底困ったような顔をして答え、愛実はそれ以上は笑うことができなかった。