十八歳の花嫁

第11話 艶聞

第11話 艶聞





「君はどんな魔法を使ったんだい?」


弘明と一緒にパーティフロアに戻るように言われ、愛実は藤臣の言葉に従った。
本当を言えば外で彼を待っていたかったのだが、ほんの数分離れるだけだと自分を言い聞かせる。

すると、弘明が愉快そうに藤臣の変化を愛実に尋ねたのだった。


「別に、魔法なんて……。わたしのほうこそ、いつも藤臣さんに助けてもらってます」


藤臣はいつも愛実の窮地に現れる。
魔法を使っているのは、彼女ではなく藤臣のほうだろう。

さっきのキスも……恋の魔法にかけられた気分だ。思い出すたび頬が熱くなり、愛実はふわふわした気持ちでつい笑みを浮かべてしまう。


そのとき、愛実の背後から険のある声が聞こえた。


「愛実様、お聞きしたいことがあります」


それは藤臣の愛人を名乗る千里だった。

白いブラウスに紺色のロングスカート、白い前掛けを付けた彼女は意地悪そうな笑みを浮かべている。

藤臣は、「約束は守る」「不実な真似は絶対にしない」そう言っていた。
でも過去は……彼は千里にも、あんなキスをしたのだろうか?

愛実の中に芽生えた女の感情が、千里に対する笑顔を引き攣らせる。


「なんでしょうか?」

「ハンカチを落とされておりませんか? これを拾ったのですが」


それは確かに愛実のハンカチだった。

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