十八歳の花嫁

化粧室で見つからず、備え付けのエアタオルを使用した。


「はい、わたしの物です。わざわざどうも、ありがとうございました」


気に入らない女性とはいえ、礼はちゃんと言うべきだ。
愛実はそう思い頭を下げた。

ところが、受け取ろうとした愛実の前で、ハンカチをふっと上に持ち上げ、ひらひらさせる。


「いつどこで落とされたか、覚えておられます?」

「え? いいえ……落としたことに気づいたのがついさっきなので」


すると、千里は片側の口角を吊り上げ、笑いながら言ったのだ。


「そうでしょうねぇ。暁様との逢引現場ですもの。やることに夢中で、お気づきじゃなかったんでしょうねぇ」


彼女はいきなり大声で、それも、とんでもない内容を口にした。

周囲の人間は驚き、一斉に愛実を見る。


「なんっ!? おっしゃる意味がわかりません!」

「いやですわ、とぼけて……。私、見たんですよ。二階の化粧室でコソコソと会われてたでしょう」

「君、めったなことを言うもんじゃない。使用人の分を弁えなさい!」


横から、弘明が千里を叱り付けるが……。


「僕も聞いたよぉー」


ヘラヘラと笑いながら、口を挟んできたのは宏志だった。

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