十八歳の花嫁
☆ ☆ ☆
最初、久美子が何を言っているのか、さっぱりわからなかった。
てっきり――自分との関係はどうするのか、契約を解消するなら違約金を払え、そんな言葉を待っていた。
ところが、妙にニコニコとし始め、藤臣に抱きつかんばかりだ。果ては、なぜか秘書のことまで口にして……。
ようやく、久美子のとんでもない勘違いに気づいた。
(何をどうすれば、そんなことを思いつくんだ?)
呆れ返ったが、これに乗らない手はない。
先に言質(げんち)を取ってしまえばいい。
「じゃあ、それでいいんだな、久美子。――久美子! 聞いているのか?」
藤臣の苛立った声に、久美子は頬を弛めつつ答える。
「え、ええ。そう言ってるじゃない。嬉しいわ」
「このマンションだが、君の名義に変える用意がある」
「そんな……マンションなんて」
ついこの間まで、『契約が終わったら、マンションはあたしの名義にしてよ』と擦り寄っていたのが嘘のようだ。
確かに社長夫人となれば、こんな数千万円程度のマンションなど、今さら、に違いない。
「それから、東部デパートのイメージモデルの件だが」
「わかってるわ。モデルはすぐに辞めます」
「辞める? 契約は来年の三月まであるんだが」
藤臣の言葉に久美子は気取った笑みを返した。
「いやぁだ、もう……これから覚えなきゃならないことがたくさんあるじゃない。それに、社長夫人がモデルなんておかしいわ。あなただってそう思うでしょう?」