十八歳の花嫁

第8話 救済

第8話 救済





美馬が愛実のアパートに着いたのは、彼女とほぼ同時刻だった。
彼はやり取りの一部始終を見ていた。

瀬崎の報告で、闇金業者の一件は知っていた。いずれ娘に手を出すのはわかり切ったことだ。だがこの様子を見る限り、目当ては最初から愛実だったに違いない。

男たちは愛実をソープランドで働かせるつもりらしい。
そうなると数年……下手をすれば一生、その世界から戻って来ることは不可能だろう。借金は借金を生み、雪だるま式に膨れ上がる。
しかし、当の愛実は弟に『すぐに戻る』と言っていた。


(世間知らずの、馬鹿な娘だ)


これほど金を必要としていたなら、ありがたく美馬の申し出を受ければよかったのだ。
そうすれば、ほんの数年で済む。
おまけに、抱かれる男はたったひとり……。

胸の奥でじりじりと何かが焦げつくようだ。
裸で他の男に奉仕する、そんな愛実の姿を想像するだけで無性に腹が立つ。


更には、ひとりの男が口にした『恨むならバカな親を恨め』――その言葉は、美馬の心に埋められた地雷原に踏み込んだ。


「二十万が二ヶ月で八十か……証書はあるのか?」


美馬は、腕の中で震える愛実に奇妙な感覚を抱きながら、闇金業者の男たちを見据える。


「テメェ、こいつの男か? 女の前だからってカッコつけんじゃねぇぞ」

「それとも何か? 貴様がこの娘の借金払ってくれんのか?」


こけ威しの台詞など美馬には通用しない。
彼は愛実を背後に庇うと、懐から金を取り出し、そのままボンネットの上に放り投げる。


「五十万ある。それを持ってさっさと帰れ。但し、証書は置いて行け。二度とこの親子に関わるな」


見る間に男たちの目の色が変わった。

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