十八歳の花嫁
だが、
「おいおい、兄ちゃん。借金は利息と合わせて八十万だぜ。足りないんじゃねぇのか? なんだったら、あんたの腕時計でも……」
それは、最初に愛実に近づいた男だった。背丈は美馬と変わらない。だが、横幅が五割増しといったところか。
男は美馬の時計に触れようと手首を掴み――。
次の瞬間、男は逆に腕を取られ、顔からボンネットに押し付けられていた。
男の肘は変な方向に曲がり、片方の手で必死に車を叩いている。
「少しでも脳ミソがあるなら、これで手を打つんだな。嫌なら仕方ない。警察と弁護士を呼ぶことになる」
美馬は軽く笑みを浮かべつつ、年配の男に話しかける。
「俺らに手を出したら、組の連中が……」
「面白い。どこの組か言ってみろ。俺が直接話をつけてやる」
やれ“組”だ、“若い衆”だ、と言い出すのは、実際に暴力団との関わりが薄い証拠だ。
落ち着き払った美馬の様子に、利口なことに男たちは勝負を捨てた。大急ぎで金をかき集めると、愛実に証書を投げつける。
「どこで、こんな野郎を誑し込んだんだ? ウブな顔して、最近の女子高生は怖ぇな」
美馬とは一切視線を合わせず、捨て台詞を残して車は走り去った。