十八歳の花嫁

第9話 子供

第9話 子供





(これから、どうなるの?)


笑顔で送り出したものの、愛実は内心パニックだった。


――政略結婚をやめて愛する女性を選んだ……


久美子の言葉は衝撃的ではあるが、当然のような気もする。愛実が同じ立場であったなら、やはり自分を選んで欲しいと思うだろう。
ただ、藤臣の体面を潰すような、こんなやり方は……。

久美子を非難する感情が自分の中に芽生え、愛実の胸はチクリと痛んだ。


(あの女(ひと)にも事情があったのよ。わたしは幸運なことに、藤臣さんに助けられてぬくぬくしてるだけじゃない)


彼女を悪く思うのは失礼だ。
妬みそうになる気持ちを愛実は必死で抑える。

藤臣はつらい思いをして育った分だけ、我が子を大事にするだろう。少なくとも、このままにはしないはずだ。
弥生は藤臣のことを亡き夫の後継者として発表した。
今さら、私生活を理由に取り消したりしないのではないだろうか?

でも、弥生がこのまま愛実に遺産を譲ると言い張ったら……?
それに、これほどまで盛大に発表してしまった後だ。“旧伯爵家のご令嬢”という肩書きを持つ愛実と婚約解消するほうが、藤臣のイメージダウンになるかもしれない。

そのときは愛実と形ばかりの結婚をして、予定どおり二、三年で離婚。ほとぼりが冷めたころ、久美子と再婚するのがベストだろう。


(でも……わたしはどうやって結婚生活に耐えたらいいの? 夢も見られないなんて)


今このときも、藤臣が久美子の肩を抱き慰めている姿を想像すると……。
愛実は鼻の奥がツンとして、涙が込み上げるのをグッと堪えた。

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