十八歳の花嫁
☆ ☆ ☆
(ここがインペリアルフロアのスイートなんだわ)
久美子は特別なフロアに降り立ったことを確認し、優越感に浸った。
妊娠のチャンスはずっと狙っていた。
何度か風呂場で迫り、その都度追い払われたのだ。
でも、香港に行く前の彼は違った。どこか浮き足立っており、切羽詰まった彼をさらに煽って……。
「こちらです。どうぞ」
第一秘書の瀬崎が鍵を開け、藤臣と久美子に入室を促した。
「待って! ロイヤルスイートじゃないの?」
「あちらは“ご婚約者様”の控え室となっております」
瀬崎の口調は慇懃無礼で、久美子を軽蔑しているのは明白だった。
「そんなっ。あたしは……」
「ガタガタ言うなら叩き出すぞ。さっさと入れ」
一泊で五十万円とも百万円とも言われるスイートに通されるものだとばかり思っていた。
久美子はがっかりしながらも、藤臣に急かされ中に入る。
中は一般の部屋より少しグレードアップした程度の広さだった。スイート仕様だが、インペリアルフロアと言ってもピンからキリまであるらしい。
入るなり、藤臣は無造作にタイを緩め、カマーバンドを外した。
疲れた素振りでソファに身体を沈める。
大きなため息と共にテーブルの上に置かれた煙草ケースから一本抜き取り、大理石のガスライターで火を点けた。