十八歳の花嫁
「奥村くん、君が愛実に付いていてくれたのか?」
「はい。他の方は専務の命令で会場を出られましたので」
由佳を見る藤臣の目に、なぜか険しい光がよぎった。
直後、愛実はハッとする。
藤臣はひょっとして、由佳と愛実の関係がホテルで顔を合わせたときのままだと誤解しているのではないだろうか?
そのことを察して、彼女は慌てて口を開いた。
「奥村さんはずっと傍にいてくださったんです。打ち合わせのときも、とても親切にしていただいて……」
愛実の言葉に藤臣だけでなく、庇われた由佳本人も目を丸くしている。
「そうか……。君は優秀な秘書だ。婚礼までひと月もないので準備を手伝ってやってくれ。それと、公式な席での役割を、愛実に教えてくれたらありがたい」
由佳は唖然とした後すぐに表情を引き締め、
「専務にご信頼いただき光栄です。愛実様がご不自由な思いをなさいませんよう、心を尽くさせていただきます。ただ……」
藤臣に微笑を作り、それをそのまま愛実に向ける。
「愛実様がご不快でなければ、ですが」
確かに、藤臣の愛人だった女性だ。
愛実のほうが『嫌だ』と言い出してもおかしくないのかもしれない。
でも由佳は藤臣との関係をひけらかし、愛実を馬鹿にするような言い方はしない。婚約を機に藤臣とは仕事だけの関係に戻ったと言い、それは嘘ではないと思う。
「不快なんてことはありません。こちらこそ、よろしくお願いします」
ニッコリと答える愛実だった。