十八歳の花嫁

「それは……嬉しいな」


藤臣は自分の声に驚いた。
まるで発情期のオス猫さながらの声色だ。湧き出す欲望を隠すこともできず、赤く染まった愛実の頬に触れた。

藤臣の部屋は三階、ここはまだ二階にも上がっていない。
せめて自分の部屋に入ってから……。
そう思うものの、部屋に入ったらどこまで進むか見当もつかない。


「ふ、ふじおみ、さん」


上ずった愛実の声を聞いた瞬間、彼女の吐息すら奪いたくなった。

問答無用で壁に押し付け、可憐に震える唇に口づける。

愛実の手から学生カバンが滑り落ち、中二階の踊り場に転がる音がした。


使用人なら、通りかかっても知らん顔をしてUターンするだろう。
彼女の家に泊まるときはエスカレートしないように最近ではキスも我慢しているのだ。
愛実を手に入れるため、この我慢大会はあと二週間続く予定だった。


「藤臣……さん……ここ、階段です」

「知ってるよ。ここならキス以上には進めない」

「で、でも、キスだってこんな場所じゃ」

「もちろん、その気になればキス以上も可能だが……それは結婚してからだ」


藤臣の口づける場所が、唇から頬を伝い首筋に移る。
化粧品の匂いのしない肌がこれほどまでに魅力的だと思ったこともなかった。
愛実にはできる限りこのままでいて欲しい。他の女のようにしないためには、どうすればいいのか……。

そんなことを考えながら、無意識のうちに手が半袖ブラウスの胸もとに移動し、えんじ色のリボンに触れた瞬間――中二階から咳払いが聞こえた。

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