十八歳の花嫁
驚きはそれだけではなかった。
和威が藤臣に言った、『おじい様が期待したひとり息子』そのひと言は愛実に衝撃を与えたのだった。
「どうして……本当のことを話してくれなかったんですか?」
美馬家に漂う、藤臣を取り巻く微妙な空気。
それに愛実も気づかなかったわけではない。
でもまさか、弥生の夫が妻以外の女性に産ませた子供だったなんて。だからこそ、弥生は藤臣を選んで欲しくなかったのだ。
自分の血の繋がった孫と結婚して、この屋敷を継いでもらうために愛実を相続人に指名した。
「どうして? これがそんなに重要なことだったのかな?」
「重要です! そんな……わたし、何も知らなくて」
愛実はただ、弥生に申し訳ないことをした、その思いだけだった。
しかし、そんな愛実の言葉に藤臣の形相が変わったのだ。
「知ってたらどうだと言うんだ!? 弥生様のために私から和威に乗り換えるのか? 私を好きだと言ったのは嘘かっ?」
「それは……そうじゃなくて」
藤臣との出会いは偶然ではない。
弥生が愛実の名前を出したからだと聞いている。それがなければ、あの夜、愛実は金融業者の男たちに連れて行かれていたはずだ。
弥生の思惑はともかく、西園寺の祖父を思い出し、愛実の名前を挙げてくれたことがすべてのきっかけだった。
確かに、弥生のまなざしから優しさや思いやりを感じ取ったことはない。
愛実のことを誰かが“旧伯爵令嬢”と呼ぶたび、表情の端々に不快感を滲ませるほどだ。
だが、自分に娘しかおらず、いきなり孫と同じ年頃の息子を家に連れて来て後を継がせると言われたら……。
藤臣に非はないが、弥生の悔しさも容易に想像できる。