十八歳の花嫁
だが、藤臣が加奈子に牙を剥くのを見たとき、気づいたのだ。
愛実は迂闊にも過去の傷に触れてしまった。
しかもまだ、癒えていない傷口に。
藤臣は怒っているのではなく、傷つき――振り上げた拳をどこかに叩きつけずにはいられないのだ、と。
「そ、そんなこと……公言なさってよろしいのかしら? お母様が聞かれたら」
加奈子の声は上ずっていた。
しかし、その表情からこの場にいる誰もが……食堂の隅に控える執事の糸井まで、藤臣の立場を承知していたとわかる。
「聞かれたら、なんです?」
藤臣の声は変わりなく冷静だ。
無表情のまま、デザートスプーンで洋梨のシャーベットを掬って口に運んでいる。
「お母様は絶対に公言しないことを条件に、認められたはずですよ! それを……こんなふうに」
「……だから?」
藤臣はスプーンを置くと水のグラスに手をやった。
「結局、弥生様もわかっておられるんだ。あなた方に彼女の唯一の財産――この美馬邸を残しても、現金欲しさに売り払われるってことを、ね」
「そ、そんなことはしませんわ!」
加奈子は血相を変えて怒鳴るが、
「では……相続税はどうやって納めるつもりですか? 祖父――いや、父の相続税を支払うために、金を融通したのはこの私ですよ。弥生様もそうお若くはない」
攻撃的な言葉を残し、コーヒーを断って藤臣は席を立った。