十八歳の花嫁
第2話 曖昧
第2話 曖昧
レンタルでいい、と言う愛実にウェディングドレスを作るように迫ったのは藤臣だった。
でき上がったのは何と挙式三日前。
レースのフレンチ袖がついた、可愛らしいAラインのドレスだ。
胸元とスカートの裾部分にビーズが縫い付けられてあるものの、基本シンプルなデザインで藤臣が選んだ中から愛実が決めた。
レースの刺繍が施されたトレーンも取り外し可能で、チャペルでは着用し、披露宴会場では取り外す予定だった。
「姉さん、メチャクチャ綺麗だ……」
「ホントに?」
尚樹の称賛に、愛実はドレスを着たままクルリと回り、にっこり笑う。
「羨ましい! 私も着たい!」
「真美は自分がお嫁に行くときに着られるでしょう?」
T国ホテルの衣装ルームでの一幕だ。
ちょうど休日ということもあり、愛実は弟妹を連れて来ていた。
本来なら一番気になるはずの花嫁の母は不在である。母は娘より自分が着飾ることに夢中なのだ。
(お母さんがいないほうが、気が楽なんて……お互い様かもしれない)
そんなことを考え、愛実は胸の内で苦笑する。
それに、ドレス姿を一番見て欲しいのは藤臣だった。
もちろん彼も来ていたが、
『欧米では新郎が結婚式の前に新婦のドレス姿を見るのは不吉らしい』
そう言って、ひとり一階のラウンジで待っている。
「あの……他の新郎の方も、ドレスは一緒に選んだりしないものですか?」
愛実は不安になり衣装ルームの担当者に尋ねてみた。
「いえ。日本では気になさる方は少ないかもしれません。ご一緒に選ばれたりなさいますよ。――あ、でも、美馬様はドレスのデザインをご存知ですし、すでに新郎様のお衣装も決まっておられますから」
ドレスを選ぶ必要もなく、そのドレスに合ったタキシードを決めるわけでもないから同席しないのだろう。
担当の女性は愛実の心中を察し、色々な理由を口にする。
そう言われたら、もう決まっているのだから当日のお楽しみにしてもいいかもしれない。
愛実もそんな風に思い始めた。
レンタルでいい、と言う愛実にウェディングドレスを作るように迫ったのは藤臣だった。
でき上がったのは何と挙式三日前。
レースのフレンチ袖がついた、可愛らしいAラインのドレスだ。
胸元とスカートの裾部分にビーズが縫い付けられてあるものの、基本シンプルなデザインで藤臣が選んだ中から愛実が決めた。
レースの刺繍が施されたトレーンも取り外し可能で、チャペルでは着用し、披露宴会場では取り外す予定だった。
「姉さん、メチャクチャ綺麗だ……」
「ホントに?」
尚樹の称賛に、愛実はドレスを着たままクルリと回り、にっこり笑う。
「羨ましい! 私も着たい!」
「真美は自分がお嫁に行くときに着られるでしょう?」
T国ホテルの衣装ルームでの一幕だ。
ちょうど休日ということもあり、愛実は弟妹を連れて来ていた。
本来なら一番気になるはずの花嫁の母は不在である。母は娘より自分が着飾ることに夢中なのだ。
(お母さんがいないほうが、気が楽なんて……お互い様かもしれない)
そんなことを考え、愛実は胸の内で苦笑する。
それに、ドレス姿を一番見て欲しいのは藤臣だった。
もちろん彼も来ていたが、
『欧米では新郎が結婚式の前に新婦のドレス姿を見るのは不吉らしい』
そう言って、ひとり一階のラウンジで待っている。
「あの……他の新郎の方も、ドレスは一緒に選んだりしないものですか?」
愛実は不安になり衣装ルームの担当者に尋ねてみた。
「いえ。日本では気になさる方は少ないかもしれません。ご一緒に選ばれたりなさいますよ。――あ、でも、美馬様はドレスのデザインをご存知ですし、すでに新郎様のお衣装も決まっておられますから」
ドレスを選ぶ必要もなく、そのドレスに合ったタキシードを決めるわけでもないから同席しないのだろう。
担当の女性は愛実の心中を察し、色々な理由を口にする。
そう言われたら、もう決まっているのだから当日のお楽しみにしてもいいかもしれない。
愛実もそんな風に思い始めた。