十八歳の花嫁

藤臣がおかしくなったのは、例の記事が週刊誌に掲載されてからだった。

由佳は怪しいと言っていたが、藤臣はキッパリと否定してくれた。だが今の彼の態度を見れば、由佳が正解なのかもしれない、と思わざるを得ない。

藤臣は恭子を愛しているのだろうか?

もしそうなら――。

藤臣は愛実と結婚する。
弥生に万一のときは愛実があの美馬邸を相続し、すぐに彼はすべてを自分の物にするだろう。
そして愛実を追い出し、恭子を妻に迎えるのだ。

そのとき、愛実にも子供ができていたら、彼はどうするだろうか?


(もし、子供を置いて出て行けって言われたら……)


「美馬さん! どうしたんですか?」

「あ、ああ。お帰り。お姉さんのドレス姿はどうだった?」


藤臣の数歩手前で考え込む愛実と違い、尚樹たちは飛びつくように、彼に声をかける。

「綺麗だった」
「お姉ちゃん、すっごく似合ってたよ」

などと口々に話していた。


「それは三日後が楽しみだな」


そんな風に答えつつ、藤臣は煙草を消しながら席を立った。


「じゃ、禁煙席のほうに移ろう。アフタヌーンティーを用意させてるんだ」

「あ……慎也に紅茶はまだ」


愛実は慌てて言うが、


「心配は要らない。子供たちでも大丈夫なように、ジュースも頼めるように言ってあるから、安心しなさい」


藤臣の笑顔にホッと息を吐く愛実だった。

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