十八歳の花嫁

彼は機械的な声で謝罪し、結婚式を続けたいという。
それが本心でないのは誰の目にも明らかで……。

和威は知っているのだ。信一郎が愛実にしようとしたことを。
藤臣か瀬崎が話したのだろう。
宏志の破廉恥な行為も聞いたのかもしれない。

だが『助けてくれ』と言った和威の横顔が、愛実の瞳に焼きついて消えない。

そして……愛実は感じ続けた疑問を、弥生にぶつけたのである。


「弥生さま……わたしは藤臣さんに言いました。『おじい様たちの愛情をお金に替えて、踏みにじるような真似はできない。お金で心は売れない』と」


愛実がその思いを違えたことは一度もない。

藤臣が好きだから、結婚を承諾した。
彼が望むなら、役に立ちたいと願ったのだ。お金で売り渡した心ではない。
援助を受けたのは事実だが、それだけは決して違う。

婚約破棄を決めたのも、愛実と絵美の間で苦しむ藤臣を見たくなかったから。藤臣は決して子供を見捨てない。
もし、愛人だった長瀬久美子が子供を産むことを選んでいたら……我が子でないとわかった後も、彼は子供のために久美子を助けただろう。

そんな藤臣だから愛した。

そして、


「和威さんは……わたしが夫として愛せるようになるまで待つと言ってくださいました。そしてわたしのために頑張る、そうおっしゃったんです」


和威の気持ちに応えたいと思った。
身を焦がすような激しい愛情だけでなく、世の中には、穏やかな思いで結ばれた夫婦もいる。

今は無理でもいつかは――。

だがそれは、和威の本心ではなかった。
愛実を思う気持ちに偽りはないとしても、こんな形で彼女を手に入れ、美馬家と共にすべてを背負って立つなど、和威は考えてもいなかったに違いない。


「弥生さまは、誰のために、なんのために、わたしを相続人になさったのですか? 祖父に対する思いが本物だったとおっしゃるのなら、わたしやお孫さんたちを駒のように扱うのはやめてください。どんな業務提携を結び、借用証を交わしたのは知りませんが……わたしとは関係なく、正当な取引をしてください」

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